島本和彦主催[HOOP HYSTERIA]バスケットボールファンクラブ
吉川 哲彦の「だむだむ探検隊」

JBLホームタウンレポート・栃木編〔2008.12.26〕

前回、田臥勇太選手のリンク栃木ブレックス入団をお伝えしましたが、今回も引き続きそのブレックスの話題です。 栃木といえば、bjリーグに参入するとかしないとか、いろいろ噂はあったんですが、結局大塚商会からのJBL参加資格譲渡で2部にあたるJBL2に参入したのが昨シーズンのこと。レギュラーシーズン3位ながらプレイオフで千葉ピアスアローバジャーズを破り、優勝を果たしました。そして今シーズン、オーエスジーのbj転籍で空いた枠を埋めるために1部昇格。能代工業高の加藤三彦監督をHCに迎え、前回の話のとおり田臥選手獲得にも成功して、いよいよトッププロチームとしての歩みを始めました。
僕も、チームができた当初から取材に行きたいと思っていたのですが、昨シーズンは浦安でのプレイオフセミファイナルを1試合観ただけ。話題性のあるチームにもなったことだし、今シーズンは必ず観に行こうと思ってそのタイミングを探っていたところ、どうやら11月22日がチャンスだということになりました。相手がレラカムイ北海道というのもちょうどいい。
ところがところが、シーズン開幕からわずか10試合で加藤HCが解任。選手との間にコミュニケーション上の問題が生じたとのことですが、簡単に言えば対立したってことですね。そんなのはどのチームでも起こりうることだと思うので、その見切りの早さには驚きました。まあプロですから「高校の先生という安定した仕事を辞めてまで来た人を、しかも3年契約しておきながら、そんなにあっさり切るのは冷たいんじゃないか」という考えは通用しませんが……ともあれ、高校界の名将がJBLでどんなバスケを見せるのか、「大人」である選手達をどう引っ張っていくのか、そして田臥をどう生かすのか等々、見所が多かっただけに、観られずじまいだったのが残念でなりません。

そして11月22日。ようやく栃木のホームゲーム初取材です。場所は鹿沼、フォレストアリーナ。前にも行ったことがあるんですが、ここは駅から遠いということもあって、車で向かいました。試合開始約1時間前に到着。アリーナの駐車場に止めてはいけないというので対面の運転免許センターの駐車場に行きますが、約300台収容(思いっ切り推定)にもかかわらず既に満車です。うーん、やはり田臥効果か。相変わらず大した集客力です。ちなみに、結局車はアリーナの駐車場に止めました。だったら最初から開放してくれればいいのに(爆)。
入口を入ると、早速ブレックスのレプリカユニフォームを着た人が視界に入ってきました。それも、1人や2人ではなくパッと見渡しただけで5、6人。これがbjなら、レプリカは普通に売っているんですから驚くこともありません。JBLではレプリカ自体がなかなかお目にかかれないわけで、背番号と名前が入っていようものなら、それはもうほぼ確実にその選手の家族です。ブレックスがプロチームだからこそ、レプリカを着る人も普通にいるわけです。
階段を降りてアリーナへ。客席は既にほぼ満席です。そんなにキャパが多いほうじゃないとはいえ、これだけギッシリ入っているとJBLの試合会場という気がしません(爆)。そう感じた時点で、ブレックスはプロとしてしっかり地域に密着した活動をしているということでしょうか。単なる田臥人気かなとも思いましたが、そうでないことは後でわかります。
試合開始前には、鹿沼市長が挨拶。昨年までオーエスジーが毎年必ず試合をしていたのに、「JBL初開催」とキッパリ。これはチームのスタッフがあらかじめ入れ知恵しておくべきでしたね。

さて、いよいよ試合開始。加藤HCに代わって指揮を執るのは、トーマス・ウィスマン氏。今はなきいすゞ自動車で小浜元孝監督の右腕だったお方です。個人的にはトム・ワイズマンという呼び方のほうが馴染みがありますが、どっちが正しいんでしょうか。ま、それはともかく、前週の初采配は東芝に連敗。ホームで新体制初勝利といきたいところでしょう。
1Q、川村の3ポイントでブレックスが先制すると、田臥も2本続けてジャンプシュートを決め、ブレックスが波に乗ります。最初の3分くらいは打ったシュートほぼ全部入っていましたね。1Qは25-18で、ブレックスが幸先のいい立ち上がり。
2Qも、田臥が躍動感のあるプレイで活躍します。この日はダブルクラッチのレイアップあり、ナイススティールあり、ビハインドザバックパスのアシストありといった具合に、ブームを巻き起こした高校時代をフラッシュバックさせる動き。加藤HCの前ではここまで良い動きはできていなかった(といってもTVで1試合観ただけですが)のに、皮肉なものです。そんな田臥がチャージングを吹かれた場面では、会場中からブーイング。微妙な判定だっただけに、田臥も結構執拗に抗議していました。
その直後、桜井良太の速攻に対して大宮宏正がしっかりコースに入ったように見えましたが、今度はディフェンスファウル。そりゃもう大ブーイングなわけですが、これだけのブーイングが出るということは、チームを応援しに来ている人が多いということ。特定の選手目当ての人は、いくらその選手に不利な判定でもブーイングまではしないと思います。せいぜい審判を野次る程度。チームを応援しているからブーイングも出るのです。
ちょっと話がズレてしまいましたが、不可解な判定に発奮したのか、大宮が連続7得点と活躍。栃木出身の選手とあって、大宮が得点するとベンチも客席も盛り上がります。最後はランディ・オアーがブザービーターで3ポイントを決めて、52-41で折り返し。
後半に入ると、形勢はガラッと変わります。といっても点差はさほど変わらず。何が変わったのかというと、審判の判定です。前半はややレラ寄りかなという感じでしたが、後半は完全にブレックスびいき。全部挙げるとキリがないので、一番酷かったのだけ挙げておきましょう。オアーがボールを持ったまま(たぶんジャンプシュートを打とうとして)ジャンプ→マークマンがシュートチェックに跳ぶ→ブロックされそうだったのでパスに切り替える→パスを出す相手が見つからない→ボールを持ったまま着地→3人の審判全員スルー。この時の北海道・東野智弥HCのリアクションは、プロ野球みたいに珍プレー好プレーの番組があったら必ず出てくるでしょう。
あまりにも審判が酷すぎたせいか、後半の試合内容はあまり覚えていません。ただ、4Q半ばに4ファウルでベンチに下がっていた田臥が残り2分あまりでコートに戻って、6秒でファウルアウトしたのは覚えています。この日の審判は、ブレックスびいきだけど田臥はあまり好きじゃないんでしょうか(笑)。
ともかく、試合は93-82でブレックスの勝利。ゲームMVPを選ぶとすればやっぱり田臥でしょうか。でも、川村もサラッと19得点を挙げているし、オアーや大宮の活躍も目立ったし、伊藤俊亮や田中健も地味ながら良い仕事をしていました。それと、このチームのキーマンは竹田謙です。
ところで、初勝利を挙げたウィスマンHCですが、試合中は超冷静な姿が目立ちました。不可解な判定でベンチからコートに飛び出そうとした選手を抑えたり、やはり判定に納得のいかない田臥らをなだめたりと、他のチームとは立場が逆転してます(笑)。会見でも「自分のスタイルとして、ジャッジにはあまり抗議したくない」と言っていました。JBLで唯一の外国人HCということもあり、今後どんなコーチングスタイルを見せてくれるのか、楽しみにしたいところです。

そうそう、ここまで書くのを忘れていましたが、この試合のMCはMC SEKIでした。知っている人しか知らないと思いますが(当たり前だ)、新潟アルビレックスで6年間専属MCを務め、bj設立時には他5チームを回ってMC指導をした人。日本におけるバスケMCの先駆者であり、個人的にはMCといえばSEKIかMAMUSHIかというくらいの人です。今回の鹿沼も、彼の煽りに乗せられた人は多かったと思います。やはりMCというのは重要なピースの1つですね。

チームグッズを身につけた人、応援ボードを掲げている人、大声でディフェンスコールをする人。そして記者席には複数の地元メディア。開幕からの観客数の多さが、決して田臥効果だけではないことがわかりました。加藤HC解任で地元の盛り上がりも冷めるのではないかと思いましたが、とりあえずは大丈夫そう。せっかくのプロチームですから、順調に伸びていってほしいものです。
あとは北海道に行けばJBLホームタウンレポートはコンプリート(一応石川や鹿児島もあるんですが)。とはいうものの、いつ実現することやら……。



吉川哲彦(よしかわあきひこ)

1974年生まれ、東京都出身。公称181cm、69kg。背番号49。
小学校の体育の授業でそれなりに上手いと勘違いして、中学入学と同時にバスケ部へ。現実を思い知り、1年後に転校した先ではバスケ部に入らなかったが、その後5年ものブランクを作ったことを今も後悔している。
半年後に大学受験を控えた1992年、バルセロナ五輪のドリームチームを見て「俺もダンクしたい」とまた勘違いし、大学でバスケ部(体育会系)に入部。3年時には主にベンチから戦況を見つめるという役割で、関西リーグ4部準優勝&3部昇格に貢献。
26歳の時、周囲の勧めがきっかけでフリーのスポーツライターに。新潟アルビレックスを皮切りに、取材対象はほとんどバスケ。老若男女問わず、バスケとつくものにはとりあえず食いついてみるというスタンスで、公私ともにバスケ三昧の日々。
2005年、初の著作「オールドルーキー」(共著・阿部理)がHOOP HYSTERIAより刊行される。

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