島本和彦主催[HOOP HYSTERIA]バスケットボールファンクラブ
吉川 哲彦の「だむだむ探検隊」

Legend・バスケは誰のもの?〔2006.7.16〕

日本バスケ界のもうひとつのプロ、Legendが発足して早くも2シーズンが終了しました。既にシーズン3が開幕しています。なんでも今回は5カ月という長丁場とのこと。
今回は、その長〜いシーズンのプレイベントとして開催されたLegend eXをレポートしようというわけですが、その前にまず、シーズン2のグランドチャンピオンシップ(5月27日)を簡単に振り返っておきましょう。

レギュラーシーズンを終えた段階で、ポイントトップはST。それにCHRISとFUJIが続く形です。CHRISとFUJIは前シーズンに続いてのトップ3入り。STは前シーズンは途中からの参戦だったため、ほぼ半分の出場でランキング9位。それでもトップの半分以上のポイントを稼いでいたとあって、本人にとっては今回のトップは当然の結果だったようです。その口ぶりからも自信がうかがえます。
初戦はまずFUJI対CHRIS。FUJIチームに入った仮エースの引退宣言が場内をどよめかせる中、本気を見せたFUJIがインサイドを支配。サイズ的に不利なCHRISチームはマッチアップを代えても対処しきれず、第3ラウンドでKOとなりました。競技バスケで中・高・大と全国制覇を経験しているFUJIの地力が出た格好です。
続いてST対ATSUSHI。初代チャンプのATSUSHIとしては、病気欠場となったTANAの分もと心に期するものがあったとは思いますが、「そんなことは俺には関係ない」とばかりにSTがガツガツ攻めて、初代チャンプはここで姿を消すこととなります。
というわけでファイナルはST対FUJI。初戦であれだけ猛威を振るったFUJIのポストプレイが鳴りをひそめ、STの1on1の強さが際立ちます。そんなこんなしているうちに、最後はSTチームのJUNが3ポイントを決めてあっけなくKO。STが栄えある2代目チャンピオンの座につき、一言。「こうなることは最初からわかっていた」。
それにしてもちょっと妙な感じがしたのは、「STは野武士的なキャラのわりに結構しゃべるなぁ」ということ。せっかくMAMUSHIというしゃべりの上手いMCがいるのだから、彼に話を振ってもらってやっとボソボソと話すという形にしたほうがもっとキャラが立つのに……なんてことを思ってしまいました。「俺はめったに笑わない」って、それを自分で言っちゃうのってどうなの?
それに、前述した“半分しか出てなくてトップの半分以上のポイントを稼いだ”というのもST自ら口にしたことです。なんかそこまでちゃんと勘定しているというのが意外というか、似合わない気がしました。「数字なんかどうでもいい。誰が一番なのか、見りゃわかるだろ」ぐらいのスタンスでいてほしかったというのは勝手な考えかしら?
競技バスケであっても、あるいは野球やサッカーといった他のチームスポーツであっても、選手一人ひとりの個性が前面に出たほうが面白い。Legendは個人戦なのですから尚更です。そういう意味では彼のような個性は貴重ですから余計にそう感じたわけです。細かい突っ込みかもしれませんが、これはLegendボーラー全員に言えることだと思います、はい。その点AJやぬまはLegendにふさわしい選手(というよりエンターテイナー)ですね。
とにもかくにも、SUPER FIGHT2に出場したDOCTOR Bこと中元剛(元JBL東芝)が興奮気味に「もうJBLじゃない。これからはLegendっすよ!」と言ってみたり、続いてSUPER FIGHT3に登場したKILLA Bこと青木康平(現bj東京)も「Legendもbjも同じバスケ。みんなでバスケを盛り上げましょう」と言って場内から喝采を浴びたり、Legendの存在は確実に大きくなってきていることを感じました。

と、思わず前置きがちょっと長めになってしまいました。では、6月27日のLegend eX@渋谷O-EASTに話を移しましょう。
最初のカードはビッグマン対決、FUJI&KAZ対TAKE&LINDZ。シーズン1から参戦予定ながら怪我のためようやくのデビューとなったKAZは、ミドルショットを得意とする197cm。一方のLINDZは、ALLDAYトーナメントでおなじみSUNDAY CLUEの一員。そんな初参戦同士の対決は、ジャンプショットやドライブからのダンクで魅せたLINDZ組が28-8の圧勝。ちなみにFUJIのアフロは初参戦時に比べて1.5倍増(当社比)だそうです。当社比って!!
続いてのカードは、女性ボーラーと車椅子ボーラーがチームを組んでの対決。個人的にはこの日一番注目していたカードです。かたや、日本人初のNCAAスカラシップ(奨学金)プレイヤー・SHINKO(富永慎子、元JOMO)と、“勉直”YASU(安直樹)。そして、3月まで富永とチームメイトだったYUI(花田有衣、元JOMO)と、障害者国体神奈川代表のNAOYA(本名失念、ごめんなさい)。代表の金井真澄氏によると、特に女性2人はノリノリでの参加だったそうです。
この勝負、シーズン1のグランドチャンピオンシップにおけるエキシビションで健常者との対決を既に経験しているYASUが有利かと思いきや、ところがどっこいキレのある動きを見せたのはNAOYAのほう。SHINKOのシュートも不発に終わり、18-12でYUI&NAOYA組が勝利を収めました。元々トリッキーなスタイルのYUIには、ストリートのほうが合ってるかもしれませんね。
第3カードでは、AJが連れてきた謎のアメリカ人がついに登場、その名もセバスチャン! まるで金髪アフロの仲本○事(土曜8時をイメージしてください)といったいでたちですが、どこかで見たことがあるような……そのことをMAMUSHIが訊ねると、AJが訳のわからない言語で通訳し始めました。「≒¥♭※かりえーす£★$……」「仮エースって言ってるじゃん!」……MAMUSHIに限らず、誰でも突っ込むところです。1カ月前に引退したはずなんだけどなぁ。
そんなセバスチャン、インディアナから来日(?)した目的は世界選手権のPRだそうで。CMが流れるまでは日本で開催されることもろくに知られていなかった、あの世界バスケですね。世界バスケ、世バス、セバス、セバスチャン! いったい誰がどうやってこんなことを思いついたんでしょうか(爆)。せっかくTANAが病気から復活したのに、完全にAJとセバスチャンに食われてしまいました。
でもゲームはTANA&MATSUの勝利。インディアナの英雄ラリー・バードばりのシュートフェイクも披露したセバスチャンですが、デビュー戦は敗戦。しかし、これから何をやらかしてくれるのか楽しみです。
そして第4カードはATSUSHI&STという過去2回のチャンプに対し、その2回とも涙をのんだCHRISがパートナーにHUMMERを選んでリベンジという趣向です。この日を最後にSTがLegendを離れるとあって、CHRISにとってはSTを叩く最後のチャンス。ポンポンとミドルシュートを決めてきます。しかしSTとATSUSHIの突破を止められず、CHRISはまたも敗れ去りました。
ただ、そのCHRISがイベントの最後に残したコメントは素晴らしいものでした。「このコートは誰にでも入る資格がある。みんなの場所なんだ」。まさにその通り。選手はもちろん、MCやDJ、観衆も一体となってこの空間が作られているのです。日本にも熱いバスケファンがこんなにいたのかと思えるほど、お客さんのノリは良いですからね。CHRISの言葉、どこかのお偉いさんに聞かせたいセリフです。

エンターテイメント性の話ばかりしてしまいましたが、最後にゲームの質について触れておきます。Legendは競技バスケで上のレベルに届かなかった人の集まりでしかない……そう思う人も多いかと思いますが、それは正しくもあり間違いでもあるという気がします。
ストリートでは、多少の接触ではファウルを取られません。ということは、相手が体をガンガンぶつけてきてもボールをキープしなければならない。ストリートの選手にボールハンドリングの良い選手が多いのはそのためです。また、Legendを見ていると、難しい体勢からシュートをねじこんでバスケットカウントという場面がかなり見られます。そうした球際の強さは、シュートブロックの際も容赦なく止めにいく激しいボディコンタクトが生んだもの。速攻を止めたら簡単にアンスポーツマンライクファウルを吹いてしまうJBLでは、そういう意味でのタフさはなかなか出てこないと思います。
そのタフさの象徴ともいうべきSTが、bjリーグ・富山グラウジーズと契約しました。Legendを離れるのはそれが理由だったのです。ストリートからNBAに這い上がり地位を築いた“スキップ・トゥ・マイ・ルー”ことレイファー・アルストンのようになれるかどうか、今後の日本バスケ界にとって大きな意味を持ちそうです。



吉川哲彦(よしかわあきひこ)

1974年生まれ、東京都出身。
中学1年時はバスケ部に在籍したが、転校した先ではバスケ部に入らず。その後、バルセロナ五輪のドリームチームに触発されて大学でバスケ部(体育会系)に入部。3年時の関西リーグ4部準優勝&3部昇格が唯一の自慢というベンチウォーマー。
26歳の時、周囲の勧めもありフリーのスポーツライターに。一番最初の取材対象に新潟アルビレックスを選び、それ以来取材対象はほとんどがバスケ。カテゴリーを選ばず、ありとあらゆる現場に足を運ぶ日々。
「自分の文章が日本のバスケ界を変える一助になれば……」と秘かな野望を抱いている。
2005年、初の著作「オールドルーキー」(共著・阿部理)がHOOP HYSTERIAより刊行される。

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